残業をなくして、業績があがった会社もある(1/2ページ)
2009年10月14日
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イラスト=螺旋デザイン・サチコ ※イラストをクリックすると拡大します
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仕事もプライベートも両立させたいと考えるひとがふえ、ワークライフバランスのとれた働き方がしだいに浸透してきたと感じます。今回、紹介するのはいちはやく実践してきた会社トリンプです。1992年吉越浩一郎さんが社長に就任すると、すぐに着手したことは、すべて社員は役職であろうとなかろうと「さん」づけで呼ぶこと、週1日「ノー残業デイ」を設けて定時退社すること、全社員が2週間の「リフレッシュ休暇」をとることの3つでした。そして早朝会議の実施、午後の仕事に社員全員が「がんばるタイム」を設けたのです。長時間、残業が当たり前だった当時、画期的なこととしてマスコミでも取り上げられ話題になりました。
「社内は一気に変わりましたね。なんとなくだらだら残業している習慣は一掃されました。その日は6時にオフィスの電気が消えてしまうくらい徹底してましたから、他の日も早く帰るようになりました。休暇を取りたがらない部課長にも、ぜったい取らせました。そして休暇中は会社に電話するのもダメ、完全に会社から離れるよう指示がでました」。吉越社長のもと、女性宣伝部長として活躍したMさんはそう話してくれました。残業できないので仕事は優先順位をつけ、テキパキやる習慣がつきました。リフレッシュ休暇をとることで本人もちがう体験ができて発想がしなやかになります。休暇中は仕事は引き継げるようにしたので、仕事をひとりでかかえこむこともなくなり、社内はとても風通しがよくなったのです。
業績もあがりました。2007年に吉越社長は退任しましたが、その間16年、不況期にも下がったことはありません。「早朝会議で社内の情報をみなで共有したこと、がんばるタイムは社内外の電話も受けないで午後2時間、仕事に集中したこと、すべての仕事にデッドラインを設けて、締め切りを守られせることで仕事の効率はあがったのです」。Mさんが、大きなイベントを次々主催できたのも、すばやい判断と、的確な実行をする力を発揮できたからです。「社員がそれぞれこうと決めたらすぐ実行、うまくいかないとさっと撤退するというやり方になったのです」。こうしたメリハリの利いた仕事のやり方によって、独身のMさん自身、仕事を離れて旅行や習い事、スキーやゴルフを楽しみました。
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トリンプ定年後、顧問を勤めたあと、現在はボランティアや知人と立ち上げた研究会、趣味で忙しい日々を過ごしているMさんは、これから就職する人にこんなアドバイスをしてくれました。「仕事とプライベートが両立できる企業を選ぶことは、自分の人生を充実させるうえで大切です。でも仕事が充実していなければ、人生は充実しません。これからは30代前半まで、自分はこの会社で何を習得できるのか考えてください。力をつけておけば、異動しても転職しても、高く評価されます」。転職が多い外資系企業に勤めてきたひとの実感がこもった言葉でした。企業は業績をあげる使命があります。その使命と社員のワークライフバランスをどうとるか、むずかしい舵取りです。表面の条件のよさだけに惹かれずに、その会社で自分が何を学べるか考えることも大切です。
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